「柚子様、待っていてください。いまそちらに回りますので」
乗るとき同様、橘さんがまた私を抱っこしてくれるらしく、私は返事をしようとした。
「橘、僕が運ぶからいいよ」
……え?
すると、私の返事よりもはやく水沢くんのそんな声が聞こえてきた。
水沢くんが私を、運ぶ……?
「え、佳人様がですか?」
橘さんもあたしと同じように目を丸くしている。
「うん。だから橘はそこで待ってて」
「……かしこまりました」
私は声を発するないまま、ふたりの会話が終わり、水沢くんが車から降りた。
そして私が座っている側のドアをあけ、私の膝裏と背中に手を回して軽々とお姫様抱っこをした。
フワッと体が浮いて、一気に水沢くんとの距離が近くなる。

