目の前に広がった広い部屋。
そしてその部屋にあるソファに座り、紅茶を飲む水沢くんの姿が目に入った。
その姿はどこかの貴族みたいだ。
てことは、ここは水沢くんのお家…。
そういえば、水沢くんの下の名前って“佳人”だった。
いつも“水沢くん”って呼び方だから下の名前に気がつかなかったよ。
「橘、その子はそっちのソファに座らせて」
「はい」
どうやらスーツさんの名前は橘さんというらしい。
橘さんは水沢くんの指示したソファに私を座らせた。
「橘、もう下がっていいよ。また呼ぶから、そのときは電話で呼ぶ」
「かしこまりました。失礼します」
私を座らせて、橘さんは扉の前で一礼してから部屋を出て行った。

