南はキュッと唇をひき結んだ。
「正直」
久しぶりに名前を呼ばれた。
「あ、あんがい怖くないよ」
ガタガタ震えながら強がってみる。意識はハッキリしてるのに、僕の皮膚はどんどん透明になっていく。
「だから心配しないで好きなように生きろ」
南は口を開いて、喉を動かしはしたものの息だけを吐いた。
僕は絶叫して疾走したいくらい実は壮絶に怖いけど、南が見ているからできない。
カッコいい去り際を演出するために、鉄の意志で仏像ポーズをとり続ける。
「やだよ。あたしが死ぬより、ずっとやだ」
首をふって南がかけよってきた。
「やだろ? みんながどうかは知らないけど、僕も中松も南の親も、いい思い出にしたいとか考えてないよ。ただ死なれるのが嫌なだけだよ。ああ天使が、お迎えが」
なんも見えないよ。
いないよ、そんなの。お先真っ暗だよ。
南は、くっとうつむいて激しく首を振った。
ぽたぽたと落涙して、しゃくりあげる。ばっ、とあげた顔はぐしゃぐしゃに濡れていて、なんとなく懐かしい感じがした。僕がにょんにょんをひいた時の顔にそっくりだ。
僕もにょんにょんくらいには昇格したらしい。
思わず笑った瞬間、白い眠気が押しよせてきた。
柔らかい波にさらわれる中、照れながらも仲直りする南達の、たぶん未来の姿が見えた。



