バイバイ南


南は目をむいてベッドに倒れこんだ。

「はっ」

天井にむかって声を撃つ。

「はははははっ」

お腹に手をやり、笑いだす。

「最高。で、仕掛けは」

 うん。

 僕はうなずいてはす向かいのベッドに座った。

「南、僕、なんか変じゃない?」

「点滅してる」

「やっぱり?」

南の心拍数を測る機械は、いたって規則的に鳴っている。

「で、さよならを言いに来た」

南はすぅぅぅと深く静かに息を吸いこんだ。

「中松と仲直りしろよ。あいつはあれで、本当に南のことが好きなんだ」


 以上。

 僕はベッドにあぐらをかいて、仏像みたいな格好をした。

右手は壁を押すような形に、左手はコインを受けとるような形に。

昨日の夜とれなかった睡眠の代わりに、一生懸命考えた死に際のポーズだ。

この姿勢ですぅっと消えたら、かなりカッコいい。

「中松くんは、もう他の子と付きあってる」

「あいつが言ったの」

「うん」

 はぁ。あいつも意地っぱりだなあもう。

「あのチャラ男が二週間も彼女なしだぞ」

「嘘つき。彼女どんな子」

「いない」

「教えてよ! どんな子」

南はひくくっと肩を震わせて、しとしとと泣き始める。

「……僕は家来で、南はお姫様なんじゃなかったっけ。昔、言ったよね」

「やめてよ。あたしの黒歴史なんだから」

僕はくすくす笑った。南がほんのり赤くなる。

「家来は嘘はつかないよ」

「家来だって嘘はつくよ」

南は跳ね起きてバケツを抱えておろろとした。