「いつまで可愛げのない顔をしている気だ?」
「もとからです」
「ま、すべてはお前次第だからな」

 英語の教科書を手渡された。

「随分といろいろと書いてあるな」
「自分のわかりやすいようにやっているんです」

 教科書には線を引いたり、メモを取るなどしている。

「兎は寂しいと死ぬそうだ」
「いきなり何の話ですか?」
「いつになったら、終わるんだ?」

 構って欲しいんだ。今の先輩は兎になっているんだ。

「もう少しです。それに先輩は兎じゃありません」

 獲物を見るとすぐに理性が切れる狼なんだから!

「またひどいことを言う気か?」

 ぎくっとしたが、ペンを走らせたままだ。

「言いません」

 耳に唇があたりそうになっているので、そう訴えた。

「正直に言ってみろ」

 だ、だめ!くすぐったい!
 これ以上エスカレートしても困るので、白状した。

「ちゃんと言ったから、今日はこのあたりにしてやる」

 私はすでに息を整えています。

「テスト、楽しみだな」
「そんなことを言うのは先輩だけです」
「褒美はいらないのか?」
「欲しいです」 
「今、間があったぞ。まぁ、いい。どうなるんだろうな」

 それは私も知りたいです。この人の褒美は自分の褒美のように思える。