言ってすぐに後悔した。先輩は口元は笑っているけど、目が笑っていない。
 怖い。やっぱり怖いよ!
 この状況をどうしようかと考えていると、頭に痛みが走った。

「痛い」

 何事かと見上げると、先輩は握りこぶしを作っていた。
 まさか、殴ったんですか?

「罰だ」

 私は頭をさすりながら、先輩のあとを追った。

「まったく、そんなに強くしていないぞ」
「憎しみを込めてしました」
「お前が今度俺を怒らせるようなことをしてきたら、俺にも考えがある」

 また良からぬことを考えている。
 大きな溜息を吐いていると、先輩の歩く方向が違っている。

「あの、どこへ行くんですか?」
「どこって、本屋だろ?」
「そうですけど、そっちは・・・・・・」
「風音。もしかして知らないのか?」

 信じられないと言いたげにこっちを見た。

「何がですか?」
「もう少し先に行けば、大きな本屋があるだろ」
「本当ですか?」