「話を聞いて。風音」
「広樹さんと何かあったの?愛葉お姉ちゃん」
「ううん、ただ、思い出していたの」
「何を?」
「先輩のこと」
「もう部屋に戻るね」

 さっさと行ってしまおうと思ったが、道を塞がれた。

「何?どれだけ仲がいいのかを話したいの?」
「違う。はじめて出会ったときのこと」

 私の手を引き、ベッドに座りなおし、話した。
 愛葉お姉ちゃんがまだ一年生だった頃、広樹さんと知り合ったらしい。
 昼休みに購買でお気に入りのパンを買う予定だったが、その日は運悪く売り切れていた。
 仕方なく、学食へ足を運ぶことにした。
 しかし、ほとんど席は埋まっていて、ここも無理だと出口に目を向けたときに声をかけられた。

「良かったら座らない?」

 知らない人から声をかけられて、少しうろたえた。

「俺一人だから」

 荷物を椅子からどかして、席をつくってくれた。
 お礼を言って、食券を買いに行った。

「人が多すぎる・・・・・・」