「私、帰ります!」
「まだ帰さないって言ったら?」

 どうしてこうなったのだろう。少し眠ることができたから、先輩にお礼を言って、そのまま帰るつもりだったのに。

「からかわないでください。このままどうするつもりですか?」
「ククッ、どうしてほしい?」

 背中に壁があたっていて、両手はふさがれている。
 私は何も言わず、顔をそらした。

「ふーん、そんな態度を取るのか。じゃあ、俺の好きなようにさせてもらうか」

 海翔先輩の手が動いたのを見て、隙を突いて逃げ出した。

「先輩なんて知りません!狼!」
「なっ!」

 このまま教室に向かって、鞄を取りに行こうかと思っていたが、待ち伏せをしている可能性があるので、避けることにした。
 教室が見えるところに移動することにした。上から見ると、誰もいないが、ドアは開いたままだった。