どうしてくれるんだと目を向けられるが、私にはどうすることもできない。

「ったく、そんなこととは知らず、涎たらして寝やがって」

 慌てて口をぬぐうと、海翔先輩は笑っていた。

「冗談だ。本気にするな」

 なんか、かすかに髪の毛に感触が残っている。

「あの、私が寝ている間に髪を撫でました?」
「あぁ、撫でたら、擦り寄ってきた」

 私、そんなことをしていたの!?待って、この人のことだから・・・・・・。

「それも冗談ですよね?」
「いや、最初は起きたのかと思ったけど、抱きしめても反応がなかったから」

 すぐに硬直した。

「抱き・・・・・・?」
「写真でも撮って、証拠を見せたら良かったか?」
「よ、良くないです!」

 自分自身が信じられなかった。理解しようと思ってもできなかった。自分の中で何かが狂ってきている。
 もがけばもがくほど、どんどん溺れていっている。そんな感覚だった。