あの日から数日経ってから、電話がかかってきた。

「もしもし」
「風音、俺だ」
「海翔先輩!?」

 どうしたのだろう、急に電話をしてくるなんて。

「お前のことをずっと見ていて思ったけど、お前・・・・・・」

 何も言わず、じっと待っていた。

「水も少し苦手なのか?」

 はい?何でそうなるの?
 的外れな質問に拍子抜けした。

「そうなのか?」

 肯定しようか、いや、嘘はよくないよね。

「違います」

 水も怖いと思うことはあったけど、一番怖いのは男。

「先輩は女に嫌悪が少しはなくなりましたか?」
「いや、特に変わりはない。何だ、誰かに何かされたのか?」
「いえ、何もされていません」

 今はあのときのようなことはされていない。されていないのに恐怖が消えない。
 どうしたらいいのかな、どうすればこれはなくなるのだろう。