「あの、手紙の人ですか?」

 私の靴箱の中に手紙が入っていて、名前と場所、時間が書かれていた。

「そうだよ。わざわざ呼び出してごめん」
「いえ、えっと、何の御用ですか?」

 私の上級生にあたる目の前の人はどこか恥ずかしそうに俯いて、ゆっくりと顔を上げた。

「俺とつきあってくれない?」

 そのとき告白した人の後ろで木の枝を踏んだような音がした。音に気がついたのは私だけ。
 私はちらりと視線を変えると、上級生が嫌なところに出くわしたとでも、言いたげな表情をしていた。再び告白した人に視線を戻すと、じれったいのか、そわそわしながら返事を待っていた。

「あの、すいません。おつきあいできません」