松木真理子には三つの顔がある。

一つは作家。もう一つは考古学者。そして、探偵である。

高知県○△村に松木を向かわせたのは、考古学者の使命としてよりも、『ユリアノート』を完結させなければならないという作家魂であった。

発掘現場に到着した松木を迎えたのは、寝ぐせのある小太りの男だった。年は50代後半にみえた。
「遠いところをご苦労様です。私は四国国際大学の山本です」


「歴史的発見をなさいましたね」
松木の挨拶に、山本は微笑んだ。

「確かに、大発見なのですが、私には発見した物がなんであるのか、わからんのですよ。松木先生に判断をしていただきたいのです。どうぞ、刀剣はこちらです」

そう言うと、山本は松木を保管所に案内した。