「父上、そんなに悩まれますな」
ヨル大王に声をかけたのは、長男のユリア・マユ王子でした。

「王子か……これが悩まずにおれるかいな。我が国の存亡にかかわる問題ぞ。ユリア家の命も危ういわい」

「幸いにして、これからは稲の刈入れ時でございます。邪馬台国も攻撃を休むでしょう。その間に、善後策を考えましょう」

「むむっ。さすが我が息子よ」

「私の優秀な部下をスパイとして邪馬台国に忍ばせております。必ずや、我が国を勝利に導く何かをつかんで帰ってきてくれることでしょう」

「そのスパイとやらはいつ帰ってくるのじゃ?」

「はっ。今日の夜でございます」