「ねぇ、王子・・・・コイツは?」


呆然とする俺の声は、バッサ、バッサとその場で羽ばたき始めたヴィーヴルの羽の音にかき消されて王子の耳には届いていない。


「もう、君が連れて行くしかないんじゃない?」


ポン、と肩に手を置いたニコルが、苦笑いで俺を見る。


「マジかよ」


確かに、王子が連れて行かないなら、俺が連れて行くしかねぇんだけど・・・


---完全に、店員オーバーじゃね?

本来、一人乗りのワイバーンに三人って。

そんなことを考えている間にも後ろ足にグッと力を込めて、いよいよ飛び立つ姿勢に入っているヴィーヴルが見えた俺は、慌てて腰元から引き抜いたロープを男に巻きつけた。

いそいそと爪の鋭い足にロープ括り付けていれば、案の定、縦に細長い瞳孔をぎょろりと動かし、睨みを利かせてくる超不機嫌そうなお嬢さん。


「ごめんね、お嬢さん。でも、これは俺のせいじゃないからっ! 恨むなら、王子を恨んでくれ!!」


全てを王子のせいにして、お嬢さんの背に飛び乗った。