「・・・で・・・どうするよ? コレ」


目の前で座り込んでいる男に視線を向けながら、隣のニコルに話し掛ければ


「どうするって・・・兄さんの言うとおりにしてたら、ヴイーヴルの足に男を近づけた時点で食い殺されると思うけど?」


「だよなぁ?」


やっぱり、俺と似たような事を考えていたらしく。


「ひぃっ・・・」


それを聞いていた男が、小さく悲鳴を上げた。


---さて。どうするか・・・


俺のお嬢さん以上に気難しいヴイーヴル。

そのヴイーヴルに人間を近づけたらどうなるかくらい、王子だって分かっているはずなのに。

まぁ、姫さんを侮辱したこの男がどうなろうと知ったこっちゃないが、神殿の入り口までは何としてでも生きていてくれないと困る。

道案内がいなくなるから。


「ねぇ・・・早くしないと、兄さん先に行っちゃいそうだよ?」


「え?」


ニコルの言葉に振り向くと、ヴイーヴルの足に男を括りつけろと言っていた王子は既にヴイーヴルの背に乗っていて、今にも飛び立っちまいそうな雰囲気で。


早くしないと、本当に置いていかれそうだった。