---コイツ、此処で振り落としてやろうか・・・


一瞬、真剣にそう思ったが、この先の事を考えると戦力は少しでも多い方がいい・・・

と、言う事でなんとか思い止まる。

それでも、イライラが納まらない俺は、ちょっと意地悪してやりたくなった。


クイッと手綱を引いて合図をすれば、スピードを上げて王子のヴイーヴルに追いついて行くお嬢さん。


「うわっ!」


スピードを上げる瞬間、お嬢さんの首が下がったと同時に聞こえた、ニコルの慌てた声。


「ど~したの~? ニコルちゃ~ん?」


アイツがバランスを崩したのが見えたけど、知らないふりして尋ねれば


「ヴァイス・・・今の、態とだね?」


ニコルの背後からブラックなオーラが漂ってくる。


---あら? 俺、やりすぎちゃった?


「何の事かな~?」と誤魔化してみるが、間髪をいれずに脇腹に拳がめり込んだ。


「いってぇ───っ!!!」


「次にやったら、吊るすよ?」


「ご、ごめんなさい・・・」


バランスを崩したのが余程怖かったのか、真顔で怒ってるニコルに迫力負けした俺は、素直に謝った。


---ニコル、怖ぇ───っ!!!