詠唱を唱え終えると、両手の間で魔法に包まれた髪留めが鈍い光を発し始めるが・・・


---何だ?


本来ならば、フローラの居場所を指し示す筈の光は一向に力を増さない。

この靄(もや)がかかった感じは・・・


「闇の力か・・・」


居場所を知られない為の闇魔法が施されていた。


あの女・・・

オリビア一人では、これだけの力は使えない筈だ。

ならば必然的に、あの女には協力者がいると言う事で・・・

強大な闇魔法を使える人物なんて、思い当たるのは一人しかいなかった。


「あの、闇の術者だな」


フローラをずっと狙っていた、あの男。

予想はしていたが、ここまで力が強いとは思わなかった。

そもそも、この大陸に闇魔法を使いこなせる術者は存在しなかった。

それもそのはずで、この大陸自体が光の魔法で守られているから、闇の力が打ち消されてしまう。


---それでいて、この力か・・・


これだけの闇が広がっていては、この魔法は効果が無い。


「くそっ!」


---どうする?


この魔法で居場所を突き止められなければ、フローラを探し出す事が出来ない。

髪留めに注いでいた力を止め、手にしたそれを握り締める。