「姫さん、ダメだっ!!!」
俺の声は、巫女達のルーンを唱える声と大勢の人々の歓声で掻き消されて姫さんには届かない。
≪アフロディーテのティアラ≫
あれは昔、神々の力を得る為に時の権力者共が生贄を捧げる儀式で使った物だ。
だが、あれは行方がわからなくなっていた筈。
何で、姫さんが身に着けてるんだ!?
フルムーンと流星群・・・
生贄を使って、神々の力を得るには絶好の日だ。
祭壇で祈りを捧げた姫さんの頭上には不気味なほどに大きく映るフルムーンと、空から降り注ぐ星々。
それに呼応するように怪しい輝きを放つアフロディーテのティアラ。
未だ、祭壇に近付く事も出来ていない俺は、跪いた姫さんの元に駆け寄る影に気付くのが遅れた。
姫さんは祈りに集中しているのか、近付く影に全く気付いていないようで目を閉じたまま。
その間にも近付く影に向かって、俺は慌てて魔法石を手に掴むと、王子に教えられたとおりの詠唱を唱え始めるが・・・
今、目の前で起きている現象が、まるでスローモーションのように流れて行く。
唱え続けている詠唱が、近付く影の早さに間に合わない。
---くそっ!!!
姫さんに近付いた人影は、祭壇に置かれていた宝剣を手に取ると、迷う事無く姫さんの胸を貫いた───

