---何だ?


一瞬見せた父上の表情が気になる。


普段、あんな表情を見せた事が無い父上だから余計に違和感を感じた。


「王子?」


隣から覗き込んできたヴァイスに声を掛けられて


「───あぁ、何でもない」


父上の後姿を見送った後、再び自分の部屋に向けて歩き出した。

ヴァイスと共に部屋に戻った後も、フローラを見た父上の顔が離れない。

フローラはまだ目を覚まさず、ベッドですやすやと眠っている。


「くそっ!」


こんな時に・・・


「どっ、どうしたんだよ!?王子」


ソファーに腰を掛けてクッキーに手を伸ばしていたヴァイス。

俺の苛立った声を聞いて顔を引き攣らせる。

明日、城に残れるのはコイツだけ。


「ヴァイス、明日はフローラから目を離すなよ」


そんな俺の言葉にきょとんとした表情を見せる。


「え?でも、姫さんは星祭りの準備があるから一日別室だぜ?近くで警備するどころか、星祭りが始まるまで姿を見る事すらできねぇよ?」


そうだった・・・


「───チッ」


思わず出た舌打ちにヴァイスの頬が引き攣る。

コイツが魔法石を使いこなしたとしても、フローラの姿を確認する事も出来ないとなると意味が無い。