「大丈夫・・?」


俺の頬に手を伸ばして触れてくる手は心地良い。

眉尻を下げて瞳を揺らすフローラと視線を合わせれば、脳裏に刻まれたあの女の顔は薄らいで目の前の愛おしい存在で一杯になる。

頬に触れている華奢な手に自分の手を重ねて瞼を閉じれば、
ざわついていた心が穏やかになっていく・・・


その手を離したくなくて、暫くフローラの温もりを感じていた。

どれくらい、そうしていたのか・・・


ゆっくりと瞼を持ち上げれば、未だ心配そうに覗き込むアクアマリンの瞳が俺を映し出していた。


「───もう、大丈夫だ」


安心させるように微笑んで腕の中に閉じ込めた。

それに答えるように背中に回ったフローラの手・・・


ぴくりと反応してしまった、その感触に僅かに腕の力がこもる。


触れた温もりを手放したら、また思い出しそうで動けずにいれば


唇に触れる柔らかい感触に思考が停止する。

ちゅっと触れるだけの口付けだけど、フローラからされたのは初めてで。


目を見開いて固まってしまった。