---ヤバイ!見失った
焦って周囲を探せば、曲が終わったダンスホールに向かうニコルが目に入る。
よく見ればニコルの隣には貴族の令嬢だろうか・・・派手な女が一緒だった。
取り敢えずは、何かあった時の為に距離を縮めておく。
ホールの壁際を通りながら視線だけはニコルから外さない。
王子の様子を伺えば、ニコルが近付いているのには気が付いている様子で、
姫さんの腰に手を回してダンスホールから出ようとしていたのに
「兄さん」
ニコルが王子に声を掛けた。
「・・・・・」
足を止めて無言でニコルに視線を向ける王子に
「もう踊らないの?」
「・・・あぁ」
「じゃあさ、次はフローラちゃんと踊りたいんだけどいい?」と有り得ない事を言い出す。
それを聞いた王子からは凄まじいまでの殺気が・・・
「断る」
一言告げて今度は振り返る事無くダンスホールを後にした王子。
---王子が姫さんに触れるのを許す筈ねぇだろ
周囲からは何事かと視線を浴びていたが、断られたニコルが肩を竦めて「断られちゃった」とおちゃらけると何事も無かったように音楽が流れ始めた。

