「まひろ」 そう優しくあたしの名前を呼ぶ。 そして、ゆっくりと顔が近づく。 あたしの頬に、優しく温かい手が触れている。 そっと唇が触れそうになったとき。 ──キーン コーン カーン コーン ……予鈴が鳴り響いた。 「……くっそぉ」 「あ、あのー……」 「あーーー……戻りますか」 「う、うん……」 翔太はゆっくり、名残惜しそうにあたしから離れる。 ……キス、しようとしたんだよね。 翔太とは、あの日以来まだキスしてない。