あたしはゆっくり起き上がって、翔太の病室へと入る。
ベッドに寝ている翔太の顔には、一枚の布が置かれていた。
「……翔太、起きてよ。あたし、リングつけてるよ?
翔太、行くんでしょ?
遊園地と、映画館と、海と……あと、水族館。
赤ちゃんと一緒に行こうよ、桜って名前つけて……。
……ねぇ、目を、開けてよ」
周りにいる全員が涙をながしている。
でも、あたしの瞳からは、どうしてか流れない。
「君が、豊崎真優さんかい?」
呼ばれた方を見ると、50代ぐらいのお医者さん。
きっと、翔太の担当の人。
「これ、翔太君から君への誕生日プレゼントだよ」
「え……?」
渡されたのは、横50センチくらいの段ボール箱。

