第一走者が走り出し、借り物が書いてある紙を見ている走者。
その走者の1人が、こちら側に走ってきた。
……え?
そして、その1人が、あたしの手首を掴む。
「な、なに?」
「走れ」
え?!
あたしは手を引かれるまま、誰かもわからない人と一緒に走り出す。
だ、だれ??
ハテナマークをだしながら、目の前の人を見ると、あたしの目には、思わぬものが目に飛び込んできた。
それは、目の前の人の肘についた、ピンク色にウサギ柄の絆創膏。
あたしは思わず、バッと顔を上げる。
この絆創膏を、肘の下につけている人は、あたしの中でただ1人で。
『えと、柄付き……だけど』
『ふ、サンキュ』
ただ、1人……。
そして、アナウンスが流れてきた。
『えー今1位の走者の借り物は、なんと、“好きな異性”です!!!』
そのアナウンスが聞こえた瞬間、顔に熱が溜まっていくのが自分でもわかった。
周りから「ヒューヒュー」と冷やかしの声が飛び交う。

