「このまま襲って、兄貴に真優ちゃんが慰められるの見ても俺はつまんないから、教えてやるよ。俺がこの学校にきた理由」
それは、たぶん翔太はわかっていて。
あたしに、絶対知られたくなかったこと……。
「真優ちゃんと兄貴を、別れさせるためだよ。
兄貴今、親父に呼ばれてんだ。でも、兄貴ずっと電話シカトでさ」
その言葉を聞いて、夏休みでのことが頭を過る。
毎日のように、鳴っていた翔太の電話。
「そんで、理由を探ってこいと俺が派遣されたわけ。そしたら、たまげたよ。たった1人の女の子と離れたくないから、だなんてさ。
言っとくけど、俺は兄貴を親父に引き渡すためなら容赦しない。そしたら、俺は楽しい学校生活を送れるわけだしね。それに、兄貴にとっても悪い話じゃない。もしかしたら、会社をまかされるかもしれないんだし」
あたしの瞳から、涙が溢れ出した。
全部、全部……あたしのせいで、翔太を引き止めてたんだ。

