星月の君




 私の存在が、兄上の北の方だと思われているというのにはなんともまあ、おかしな話だ。
 兄は兄であるし、私は妹だ。仲が良いのは自慢できる一つであるが、妻だなんて。

 笑っている場合ではない、と言われてしまう。
 何をそんなに心配しているのか、と思ってはっとする。


 もしかして。




「これを見てみろ」




 綺麗な色の紙だ。それだけならばよかった。

 「まあ!」と隣から小雪の可愛くらしい声があがり、次に「はあ?」と可愛くない私の声が続く。



 噂に聞く貴方様のことを思うと今夜も眠れず云々。
 文のやり取りをして欲しい云々。
 ああ貴方を思うと胸が苦しい云々。



 ……、なんだこれ。

 鳥肌が立ちそうになるその文は、恋文とでもいうのか。噂は兄の北の方、つまり妻云々であるのに、何故文がくるのか。