星月の君




「兄上、落ち着いて下さい。ほら、息を吸って吐いて」

「そ、そうだな。吸って―――じゃなくて」



 ああくそ、と小さくもらしたがやがて「厄介なことになった」といった。

 厄介ってなんだ?
 まさか、小雪か見初められた!?
 小雪はまだあげません、とひしと抱きしめたら兄は溜息。どうやら違うらしい。そして小雪が「わたしは、まだお嫁にいきたくないです」というからもう、可愛くてしかたない。

 小雪を離して、再びどうかしましたかと聞いた。




「お前は琵琶や笛が得意だろう。とくに笛の音は私も好きだから許可したが……。やはり私のせいかも知れぬな」

「何を」

「噂になっている。しかもその噂が――――」




 はあ?という、なんともいえない声が出た。
 こればっかりは兄も咎めず、私も驚いたよと力なくいった。