幽霊部員。

仏壇には咲子さんがいた。

私がいつも見ている姿。

お母さんの横に、 

咲子さんは座っている。

お母さんには見えていない。

「私、

 吹奏楽部で、部長をしています。

 ある時から、

 咲子さんが見えるようになりました。」

事細かく事情を説明する。

お母さんは泣いていた。

咲子さんがちゃんと隣で、

支えてる。

「私が、

 ちゃんとそばにいてあげればよかったのに。」

「お母さん、

 私が弱かったから、

 ごめんなさいって言ってます。

 お母さんは何も悪くないのに、

 苦しめてごめんなさいって。」

それを私が言うと、

ハンカチに顔をうずめた。

もらい泣きをしながら、

私も話す。

「それで、

 今度県大会があるんですけど、

 咲子さん、

 一緒に演奏したいって。

 私、

 咲子さんのスペースを作っておきます。

 咲子さん、

 一生懸命練習してるんです。

 見に来てもらえませんか。」

ハンカチに顔をうずめたままだ。

そっとしてあげたほうがいい気がした。

「私、

 そろそろ帰りますね。

 お母さん、

 咲子さん、

 さっきからずーっとお母さんのそばにいます。

 言いたいことがあったら、

 言ってください。

 ちゃんと、

 聞いてますから。

 じゃ、

 失礼します。」

ここからは、

咲子さんとお母さんの問題だから・・・

そんな気がした。