俺が彼女を抱けない理由



今日は朝から雨が降り続いている。



俺は昔から雨は嫌いじゃない。



1人で部屋にいるとき雨の音は気持ちを落ち着かせてくれた。



「拓くん。」


「はい」


「これ打ち合わせの資料。あそこの事務所まで持っていってくれる?」


「了解です」


「ついでにお昼いっていいからね」


頼まれた資料をカバンにいれて会社を出た。


そんなに遠くない距離だから歩いて行くことにした俺は傘を借りてオフィスを出た。


最近は車移動が多くて体がなまっていた俺には丁度いい距離だ。




次の信号を曲がればもうすぐ着くという所で俺の斜め前には見覚えのある後姿を見つけた。








沙希?






後姿でも間違えることはない。



そんな沙希に声をかけようとした時店から出てきた男と傘をさして歩いていった。



俺は思わず距離をとる。



そしてその二人の後姿を見ながら歩いた。



信号のところまで来ると男は手を振って違う方向へ歩いていった。




俺はそれを見届けた後自分の行くべき方向に曲がろうとした。






「拓!!」



なんで振り向くんだよ。


少し会わない間にやけに大人の女になった気がした。






「さっきの彼氏?」


「うん」


そう嬉しそうに笑う沙希はとても幸せそうだった。



「学生?」


「うん、2こ下で今設計とか勉強してるのかな。名前はマサキ。西村雅樹」


聞いてない事までベラベラと話す沙希の言葉をなるべく聞かないようにしていた。



「拓どこ行くの?」


「ちょっとこれ届けに。」


「そっか」