俺が彼女を抱けない理由



1度帰った方がいいだろうな。


心の中で誰もいない事を何度も願う。


電気もついてなければ車が停まってもいない。


俺は人目を気にするようにそっとうちに入った。


別に何を持って行くでもない。

ただ通帳とカードを机の上に置いた。



もうここには帰らない。


そう決めて俺は家を出た。


ここに、いい思い出なんてなくてよかった。





鍵を閉めてそのままポストに入れる。



もう俺には必要ないから。


外で遊んでいた隣の家の子供に「バイバイ」とだけ言って親父の所へと向かう。





『もしもし拓?』




『瞬。。』



『今どこ?』



『うちをでたところ』



『学校の方は、拓が家の事情で辞めたっていう事になってるから』




『そっか』




『三浦泣いてたぞ』





『そっか』




本当に聞きたい事は聞けなかった。