俺が彼女を抱けない理由



11月の風は冷たくて明日からの俺を不安にさせた。


なんか笑えるな。


好きなものを一度に全部失ったし。


公園のベンチに座ったまま空を見上げる。


はぁ。。


まだ高校でやりたい事いっぱいあったのにな。



こんな時に出てくるのはやっぱりアイツのいじわるそうに笑う顔でどうしようもない。


俺、携帯の番号もメルアドも知らないし。。笑


ほんと笑える。


どれくらいいただろう。


カバンの奥からしわくちゃになった親父の名刺を取り出した。




こんな時に頼るのが一度しか会った事のない親父なんて。。


番号を押す指にも力が入らない。




『はい、高井です』



『あっあの。』



『。。拓か?』





『えっ?』




俺の番号は知らないはずなのに。。



『声で分かるぞ。笑』



『あっ。』



優しくて安心のできる声に一気涙腺が壊れた。




『拓?』





『はい』





『そこに住所書いてあるだろ?』





『はい』






『じゃあ待ってるからな』





それだけ言って電話は切れた。