俺が彼女を抱けない理由


「ゴメン。みんなにも言っといて」


「わかった」


香川が心配そうに見てるのが分かった。


でも俺は振り向かずに駅まで歩いた。


いつも振り回されて、親らしい事なんて何もしてくれてなくて、言いたい事はたくさんある。

きっとあんな奴放っておけばいいんだろう。

そう思いながらもうちへと急ぐ。




家の前まで来るとあの日の事を思い出した。


あの人に会うのが怖い。



どんな顔して会えっていうんだよ。

俺は恐る恐る玄関を開けた。


「ただいま」



「。。。拓?」



「うん」


泣き腫らした目の母親が俺を抱きしめてくる。





あの日の光景がフラッシュバックして体が震える。








「やめろっ」





突き飛ばした母親の体は床へと倒れた。



「ごめん」





俺はそのまま自分の部屋の鍵を閉めた。



体の震えが止まらない。