俺が彼女を抱けない理由


「じゃあ帰って来いなんて言うなよっ!!」




誰もいない部屋で叫んでも声が届くことはなくそのまま外へ出た。



行くあてなんてない。


俺は家から少し歩いた所にある小さな公園のベンチに座って大きく溜息をついた。


残り少ない桜をぼーっと見ながら母親の事を考える。


あの人の男癖が悪いのは今に始まった事じゃない。

もう俺がそれがどういう事なのか理解できる頃にはいろんな男が出入りしてた。


俺の親父はイベント会社の社長をしてて大きなビルをいくつも持っているような人だと聞いた。


あっちにも俺の2こ上の息子がいて同じ高校らしい。


もちろん母親は違う。


愛人の子なんて所詮こんなもの。


母親だけでも俺の事をちゃんと愛してくれていたらそれだけでよかったのに。


4月といってもまだ日が落れば冷える。




・・帰ろう


重い腰を上げて来た道を戻る。


テーブルに並ぶ全く手をつけてない料理がなんだか申し訳なく感じて少しだけ口にした。


「香川沙希か」




めちゃくちゃな女だったな。


俺は新しい制服をハンガーにかけてソファに寝転がった。