俺が彼女を抱けない理由



「沙希〜!」



グランドの向こうから走ってくる夕実ちゃんの姿が見えて俺は香川と少し距離をとった。






「あっ夕実っっ!マネージャー姿さまになってるよ」


「でしょ。笑」


この小悪魔的笑顔にすでに瞬もはまっている。




「結城クン!すごい人気だね。中学の時もファンがいっぱいいたんだよね。しかもその顔!かっこよすぎぃ!アタシ正直沙希と付き合うのかと思ってたし」


「ないない」

そんなにはっきり否定しなくてもよくないか?


今、俺どんな顔で二人の会話を聞いているんだろう。。


きっと冴えない顔をしているんだろうな。






「そろそろ着替えてくるわ」


「アタシも!あっ、今日は3人で帰ろっ」


「先輩はいいの?」


夕実ちゃんの言葉に香川の顔をじっとみる。


「いいって」


「じゃあ待ってるね」


香川と帰るのは久しぶりだった。



ただそれだけの事なのに足取りが軽くなる。

更衣室の鏡で自分を見て髪を水で濡らし簡単にセットとかしてみる。


俺。。なにやってんだろ。。


「拓まだぁ?」



その声で我に返った俺は急いで荷物を持って部室を出た。


「おっ瞬!」


「瞬くんも一緒になったからぁ」


なんだか夕実ちゃんは嬉しそうだった。