俺が彼女を抱けない理由

数分後そんな空気の中結衣ちゃんはやってきた。


「こんばんわ〜」


葵と沙希の結衣ちゃんに向けられる冷たい視線が俺には意味が分からない。


「おう入れよ。仕事大丈夫だった?」


「うん。今終わった。中田さんがここまで送ってくれたんだ」



結衣ちゃんは兄貴と同じ事務所でモデル兼女優。俺も仕事で何回か見たことがあった。



「沙希〜何ボーッとしてんの?」



兄貴の声にも全く反応できない沙希。



「結衣さん。拓ちゃんの会社のパーティ来られてましたよね?足大丈夫ですか?」


葵にも笑顔はなかった。


あのパーティの時転んでケガをした結衣ちゃんを兄貴が病院まで運んだんだ。


その事?


なんでそこまで二人して噛み付くかな。。。


俺は葵の手を少し引っ張って引き寄せた。


「どうした?」


でもそんなのお構いなしで結衣ちゃんの方をじっと見る。




「結衣さんと高井さんが怪しいの」



「そんな事ないだろ?」




俺らの耳元での会話にちょっと兄貴が笑ったような気がした。


沙希は何も言えないまま下を向いてる。



「沙希〜みんなにビールついであげて〜」



兄貴は何もなかったように沙希に声をかける。



無言のままでグラスに注ぐ沙希。


「っで仲直りしたわけ?」



「おかげさまで」



「頼むから二人の揉め事は二人で解決してくれよな」


「はぁい」


なにか驚いたような顔で兄貴を見る沙希と葵。


「おかげで俺疑われてるし。。笑」