「沙希ちゃん!!」
俺達の後ろから兄貴が走ってくるのが見えた。
俺と葵ちゃんは立ち止まらずに先に歩いていく。
俺は二人の事が気になりながらも後ろを振り向くことはしなかった。
なんとなく見てはいけないような気がしたんだ。
「待ってよぉ」
嬉しそうに走って追いついてくる沙希は手に持った紙を大事そうにポケットに入れた。
その笑顔に俺は今までにない不安を覚えた。
「沙希なに〜?その紙は〜笑」
葵ちゃんが沙希のポケットに手を入れるふりする。
沙希は幸せそうな顔で俺らを抜かして走っていく。
「沙希、嬉しそうだね」
葵ちゃんの言葉に俺はうまく反応が出来なかった。
ただ遠くなっていく沙希を見ているだけだった。
「ただいま」
「拓ちゃん。祐ちゃんの舞台どうだった?」
「すごくよかったよ」
マナさんの質問にも適当な返事をして俺は自分の部屋に入った。
沙希の幸せそうな顔がみたいから兄貴の舞台に誘ったはずなのに、今の俺の気持ちは何?
それは後悔だった。

