コンコン
「祐ちゃん」
俺の呼ぶ声にまだ準備中の兄貴が裸に近い格好で出てきた。
「お〜拓、今日はありがとな」
「こちらこそ」
「沙希ちゃん久しぶり。楽しんでいってね。笑」
兄貴の一言で沙希の顔は一気に赤くなる。
今までのアイツは何だったんだ?
分かりやす過ぎだろ。。。
「ゆう。そろそろ行くよ」
共演女優にそう言われて戻っていく兄貴を沙希はボーッと見つめたままだった。
「沙希ちゃんどんまいっ」
そういって俺は沙希の肩を叩いて客席の方へ向かった。
既に満席の劇場は若い女の子達がが舞台のパンフレットを嬉しそうに見ていた。
その目は沙希と同じで恋する女の子の目だった。
俺はその光景を見ながら改めて兄貴のすごさを思い知った。
「もうすぐ開演だね」
「うん」
今日の舞台は昼と夜の2部。
兄貴はこれが終わったらもう一回ある。
体力のいる仕事だな。。
そんなことを考えてると次々と電気が消えあっという間に真っ暗になった。
そして舞台のスポットライトに兄貴が浮かび上がる。
その兄貴を見つめる沙希。
俺は舞台の兄貴と沙希を交互に見ていた。
客席全体が息を呑むように舞台上の兄貴を見ている。
俺もその演技に心を持っていかれた気がした。
どれくらいの時間が経ったんだろう。
拍手の中電気はつき観客は帰る用意をしてる。
「じゃあ俺らもいこうか?」
沙希には俺の声なんて届いていないみたいで席に座ったまま動かない。
「あっごめん」
「最後にもう一回楽屋いっとくか?笑」
「ううん。もう楽屋に行くのは迷惑だよ」
沙希の言葉に納得して俺達は劇場を後にした。

