俺が彼女を抱けない理由



そこから俺は沙希と兄貴の方を見る。


会話もせずに固まっている沙希と兄貴はただ二人してテレビを見ていた。

きっとテレビの内容なんて頭に入ってないんだろうな。





「沙希ちゃん。来月の舞台見に来てくれるんだよね?」



「そうなんですよ。拓がとってくれて。。
高井さんの人気すごくって全然チケットとれないんですよ」






そのチケットは兄貴が俺にくれたものなのに兄貴はそんな小さいことには触れない。



「そうなの?ありがたいよ。今回初の主演舞台だから力入ってるんだぁ」



「・・・・」



沙希はただウンウンと頷いてる。



お前いつもと全然違うじゃん。

兄貴が沈黙にならないように話を振っているのが分かった。





「俺俳優むいてるかな?」


「向いてるもなにも、アタシ高井さんの演技大好きです!」


もう沙希は兄貴しか目に入ってない。



「沙希ちゃん。何力入ってるんだか。笑

もう鍋できるよぉ〜」



俺の声でやっとこっちを見た沙希は大きく息を吸い込んだ。








「あの。。。拓ちゃん?」



「・・・・」


「拓ちゃん?」



「あっゴメン」



そんな葵ちゃんの声に俺も沙希の方しか見てなかったことに気づく。