この頃の沙希は本当に仕事が楽しくて仕方ないみたいだった。
結婚かぁ。俺は誰とするんだろう。
・・・するのかな。
26歳の俺も何も変わらない。
たまに女と遊んだり、時には寝たりもした。
でも、それは俺に特別な感情を持ってない、遊びたいだけの女だけ。
常にお互いが傷つかない関係を選んできた。
周りから見たら最低だと思われるかも知れない。
でも俺はそうしてきた。
今でもたまにあの光景が目に浮かぶときがある。
ふとした瞬間に。。
母親のあの冷ややかな目を忘れることができない。
「拓ちゃ〜ん。ケーキ食べようよ」
マナさんが呼びに来る。
「うん。分かってる」
これ以上待たせても悪いと思い俺は親父達の部屋に行くことにした。
「来年からもうケーキいいよ」
「そんな寂しいこと言うなよ」
「じゃあローソク消して」
「はいはい」
俺は26本のローソクを吹き消した。

