風が強い。 こんな日に細い橋の上に降り立つのは、この街でふたりだけ。 「目ぇ開かねえわ」 まぶしそうに瞬きしている。 いつまでも、空だけが黒いまま。 表情が見えないまま。 泣いても笑っても怒っても 真っ黒のまま見下ろしていた。