うんと耳を傾けた瞬間、不快な轟音が飛び込んだ。
国道を走る車の音。
時々、ああいう車が通る。マフラーが破れてるんじゃないか、と思うような音を立てて。
本当にうるさくて困る。
乗ってる本人だって、うるさいと思うけどなあ……車内で音楽なんて聴こえてないんじゃない?
音が遠ざかっていく。
「もう、うるさいわね」
河村さんも怒ってる。
それに対して、彼が答えたのかはわからない。だって声が聴こえないから。
「海棠さんは、この辺りの人じゃないのね。どうしてここに来たの? ここにはしばらく居るつもり?」
河村さんの問いに、耳がぴくぴく動いたような気がした。
それは、私も知りたかったこと。
聞き逃すわけにはいかない。
それなのに、肝心なところが聴こえない。
もう、いいや。
ささっと着替えて、更衣室を出る。勢いよくドアを開けたら、二人が同時に振り返る。
何か、まずかった?
「すみません……」
一応小さく頭を下げて、逃げるように売り場へと向かった。

