聴かせて、天辺の青



段ボール箱の中からぶちまけられて床に散らばっている物は、どう見ても仕事とは関係のなさそうな物ばかり。


アウトドアで使う折り畳みテーブルやバーベキューコンロ、網や鉄板など。絶対にここでは使わないものだけど、去年の秋ぐらいに皆で海岸でバーベキューをした時に使ったものだ。


どうして今、こんな物を?
疑問に思っていると、


「瑞香ちゃん、びっくりさせてごめんね。ほら、もうすぐ桜が開花だって言うから皆でお花見行きたいなぁと思ってね、藤本君に道具を探すのを手伝ってもらってたのよ」


と河村さんが謝る。恥ずかしそうに頬を赤く染めて焦った様子がいつもと違う。きりっとした印象の河村さんらしくない。


すると、河村さんの隣で段ボール箱に手を掛けた海斗が首を振った。


「いや、河村さん、すみません。俺が手を滑らせたから……」


海斗の声が、少し震えているように聴こえる。


本当に申し訳なさそうに顔を伏せる海斗が、いつもより小さくて痛々しく感じられるけど気のせいかな。