聴かせて、天辺の青



やがて桜並木が途切れ、ぐるりと半島を巡る海沿いの道路は山の方へと緩やかなカーブを描いて行く。


海が見えなくなった代わりに、山の景色が広がる。


「あそこに大きな駐車場があるけど、何かあるの? 店とかなさそうだけど? 車を停めてどこに行ってるの?」


彼は助手席の窓から見える空き地を指差した。空き地には何十台もの車が停まっている。


確かに不思議だろう。
駐車場の周辺には、店舗や家なんか見当たらないのだから。


「この先に発電所があって、定検の仕事に来た人たちがここに車を停めて、バスに乗り合わせて発電所まで行くの。発電所の駐車場には停めきれないから」

「そうなんだ、そんなに人が集まるんだ……」


と零して、彼は周りを見渡している。


それ以上は会話もなく、車は丁字路に突き当たった。見上げた道路標識には左に発電所と書かれてあるけど、見えるのは山の景色ばかり。発電所らしきものは見えない。


思ったとおり、彼が尋ねた。


「発電所はここからまだ遠いの?」

「うん、あの山のまだ向こう側だから、ここからは見えないよ。見学出来る時期もあるよ」

「そっか、見学もできるんだ」


と言って、彼は窓枠に肘をついた。