聴かせて、天辺の青



走り出した車中は終始無言。


きらきらと日差しを浴びる穏やかな海原を横目に、白瀬大橋を渡っていく。片側一車線の道路が、約一キロ続いている。


まっすぐ海の上を走り抜けていて、気持ちいい。


「ここ、人も歩けるの?」


いきなり沈黙を破ったのは彼。
大橋の真ん中を過ぎた頃、窓の外を見たまま彼が問う。


「うん、歩けるけど、あまり歩いてる人はいないよ。自転車で渡る人はいるけど」

「ふうん……歩くと気持ち良さそう」


と言ったのは私に向けられたものか、それとも独り言か。わからないから返事しないでいたら、また沈黙。


大橋を渡ると助手席側の窓にはなだらかな山の斜面、運転席側の窓からは道路脇に等間隔に植えられた桜並木が見える。


桜の蕾は今にもはち切れそうなほど膨らんで、淡いピンク色を帯びている。
桜並木の向こうは、緩やかな下りの斜面が海まで続いている。


いつの間にか、彼が運転席側の景色を観ている。私を見ているんじゃないだろうけど、少し気になって運転しづらい。


「もうすぐ咲きそうだね」


沈黙に耐えられずに言うと、


「そうだね」


と彼はあっさりと返して、あちらを向いた。