聴かせて、天辺の青



おばちゃんの愛車で出掛ける。
もちろん運転手は私。


もし彼が強盗犯だったら、途中で襲ってきたりしないだろうか。刃物を突き立てて、財布を渡せとか言ったら……という不安はすぐに和らいだ。


助手席に乗り込んだ彼が、財布の中身を確認している。ちらりと覗いたそこは、思ったより厚みがあったから。


スウェット姿には似つかわしくないと感じるほど。まあ、スウェットは英司のものなんだけど。


そして、今度は違う不安が浮かんできた。


自分に危害を加えられるのではないかという不安よりも、何か悪いことをして手に入れたお金じゃないかという不安。


ふと彼が顔を上げる。
とっさに目を逸らしたけど、遅かった。


「何?」


冷めた口調に、体が強張って言葉も出ない。彼が財布をスウェットのポケットにしまい込んだ。


「たくさん持ってると思った?」


と問われたから、黙って頷く。
彼は至って無表情。


「俺の全財産、貯金も全部解約して残ったのがコレ」


息を吐きながら、小さく零した。
諦めたような目が悲しげにも見える。


「へえ……でも私より多いよ、私なんて貯金無いから……」


せめてものフォローのつもりで言ってみたけど、彼の返事はなかった。