彼を引き連れて 一階に下りて行ったら、ちょうどおばちゃんが洗濯を終えて入ってきたところだった。
大きな洗濯篭をぶら下げて、足取り軽く洗面所へと向かうおばちゃんの背に呼び掛ける。
「おばちゃん、掃除終わったよ。買い物しに行ってこようか? 私も買いたい物があるし」
「ありがとう、お願いするわ、そうだ、瑞香ちゃん、彼も一緒に連れて行ってあげたら? 何か要るかもしれないし」
「え?」
と口に出してしまってから気づいたけど、私の後ろに彼がいる。
「買い物って、どこまで行くの?」
振り返りざま尋ねられた。
おばちゃんの手前、嫌とも言えず。要るものがあるなら買ってきてあげようかと本当は言いたかったけど。
「そこのスーパーまでだけど、そんなに大きなスーパーでもないけど、よかったら一緒に行く?」
なんて、不本意ながら言ってしまった。断ってくれるかな、と密かに期待を込めて。
なのに、
「ふぅん、スーパーか……じゃあ連れてってもらえる?欲しい物があるし」
と、彼は無愛想な顔で答えた。
急に行きたくなくなったけど、もう後には引けない。

