聴かせて、天辺の青



まさか、仕事のことを突っ込まれるなんて思わなかった。


私に興味がある云々じゃない。
きっと本気で、この町に居着こうとしてるんだ。


「この近くの道の駅だけど」


そこから先は、あえて言わなかった。ここまでで会話を終わらせたかったから。


私の勤めてる道の駅で働きたいなんて言われても困る。本当に強盗犯だったら、捕まった時におばちゃんが匿ってたとか疑われかねない。


彼が何を言い出すのか、ドキドキしてしまう。


「ふぅん、道の駅があるんだ。大きいの?」

「それなりに大きいよ、シーズンになると観光バスも来るし……バスツアーのコースにしっかり入ってるから」


よかった、話が逸れてく。
勝利を確信したように、私は心の中でガッツポーズをしてる。彼はそんなこと気づくはずない。


「この辺りの観光って何がある?」


え? まだ聞くの?
てっきり、会話は終わったと思ってたのに。


「やっぱり海かな……うん、海が一番だよ。白瀬大橋を渡ったらキャンプ場や海水浴場があるし」

「海水浴か……」

「海水浴、するの?」

「いや、苦手」


だったら、言わないでもいいじゃない? と思ったけど、それ以上会話は途切れたから良しとしようかな。