聴かせて、天辺の青



それからはいつものように、カーテンを開け放って網戸を全開にする。まずは掛け布団を抱え上げて、窓の内側を横切るクロムメッキ仕上げされたポールに掛けて丁寧に広げた。


「こうやって掛けて……」


言いながら振り向いた。彼がまだドアの傍に立って見ているものだと思って。


それなのに彼は私のすぐ後ろに居て、残されていた敷き布団を抱えている。まったく予想できなかった彼の行動に、出掛かっていた言葉がすっかり消えてしまった。


「これも、ここでいいの?」


ぼそっと彼が言う。


「うん、そう、この隣りに……」


言い掛ける私を押しのけるように、彼が布団を掛けて広げる。手つきはさほど悪くない。男の人だから、もっと乱暴に扱うのかと思ったのに。


続いて洗面所の隣りにある納戸から掃除機を取ってきて、部屋の中を掃除する。そのあとは洗面所とトイレとお風呂場の掃除。


教えている間、彼は表情を変えることなく淡々と私の話を聞いていて、聞き終えるとすぐに行動した。


言われてから行動するんじゃなくて、聞いたらすぐに実践しようとする積極性も感じられたのは意外。


でも仕事とはいえ、和田さんたちの部屋に彼を一人で入れるのはまだ不安だった。しばらくは私が見張っていれば大丈夫かな。