ふいに、彼が空を仰ぐ。 風を待っていたかのように、ふわりと両手を広げて伸び上がった姿は、今にも羽ばたいてしまいそう。 心地良さげに見えたけど、内心は怖くて堪らなかった。 地面から浮いた踵は、いかにも不安定で危なっかしくて。 そう、いつ一歩踏み出したとしても、浮かび上がったとしてもおかしくない体勢。 海に向かって。 ダメ! 飛び込まないで! 今にも宙に浮きそうな彼の体に、私は咄嗟に飛びついた。 「早まらないで」と叫んで。