聴かせて、天辺の青



ぐいっと缶コーヒーを飲んで、海斗が肩を寄せた。辺りを窺う仕草をしたあと、声を潜める。


「あのさ、昨日瑞香が帰ってから警察が来たんだ。コンビニ強盗があっただろ? 写真置いて行ったけど……ソイツ、怪しくない?」

「え? 彼が強盗したって思ってる?」


海斗の突拍子もない言葉に、私はただ目を丸くするだけ。すると海斗は自信に満ちた顔で、大きく頷いた。


「ああ、東京から来たって言うけどタイミングが良すぎると思わないか?……強盗に失敗した後、そこの海まで逃げて……とか、考えられなくない?」

「まあ、考えられなくはないけど……ひょろっとしてるし、そんな事する勇気があるようには見えないなあ……」


言われてみれば、単なる偶然ではないようにも思える。


彼の来た日に起きた強盗事件。失敗して逃げて、彼は海にたどり着いた。海を見ながら、これからどうしようかと考えていたのかもしれない。


でも、あんな線の細い人に強盗なんてできるのだろうか。


「勇気じゃないって、人間なんて切羽詰まったら何するかわからないものだって」


海斗の低い声が、圧し掛るように胸に沈んでいく。代わりに浮かび上がるのは、微かな不安。